ローマは確かに美しく壮大だ。ヴァチカンの大聖堂にも度肝を抜かれた。ただ、ローマの遺跡などについては、色々な媒体で語られているためここで、稚拙な感想を言っていくつもりはない。

 ローマでの思い出として、一番印象深いのは、カルボナーラ発祥と言われている店にカルボナーラを食べに行ったときの事だ。 このカルボナーラ発祥の店は人気店で、予約必須な店との事だった。 大体、僕は予約というもの自体が苦手だ。お店に電話するだけで緊張してしまう。特に外国なんて、眼と眼で会話しているから何とかなるが、電話越しの会話なんて、意思疎通ができる気がまったくしない。その為、予約は一切していなかった。

 店につくと何人かのお客さんが並んでいた。中には日本人の観光客もいるようで日本語が聞こえてくる。わざわざ、メニューを日本語訳してあるものを印刷してきて、偶々居合わせた日本人大学生の女の子に見せてあげているようだった。

 何食わぬ顔で、列に並ぶ。僕は旅行中の日本人には極力干渉しないようにしている。どうやら、他の日本人観光客はガイドさんに予約してもらっていたようだった。僕の番になり、予約が無い事を伝えると、あと3時間後くらいなら大丈夫だと思うと言われた。

 3時間ローマをぶらつくなんて簡単すぎる。むしろ時間が足りないと感じるほどだ。トレビの泉はライトアップされていて、昼間とは違う趣がある。昼間と夜、それぞれの違いを楽しんでいれば、あっという間に3時間は過ぎていく。

再び、カルボナーラのお店に行く。

「予約はあるかい?名前は?」

「予約は無いけど」と伝える。

「じゃあ満員で入れないよ。ごめん。」そう言われてしまった。

ここまできたらカルボナーラを食べずに帰る事はできない。

 さっき応対してくれていた店員を捕まえ「3時間後なら大丈夫と言われたから来た。名前は聞かれなかったんだけど無理ですか?」と訴える。応対してくれた店員は、僕の事を見覚えがあったようだ。

「あと15分待ってくれたら、絶対に食べさせてあげる。」

 本場カルボナーラを3時間歩き回った後の超空腹状態という最高の条件で食べることができたのは一番の幸福だろう。アレを食べたら日本のカルボナーラはもう食べられない。それほどまでに美味しかった。

宿近くの公園にあった遺跡。この門をくぐればどこか異世界に飛ばされてしまうだろうという予感がある。

 イタリアは、南北格差が大きいと言われている。確かにローマまでくると少し雑多な雰囲気が感じられてきた。都市に人間臭さが目立つようになってきたのだ。

ローマからナポリへ移動すると街並みはさらに雑多になってきた。

ナポリ

ナポリを散歩していると遊園地が見えてきた。どこかで知っているようなキャラクターがいる。こういうのはアジアだけだと思っていたら、ナポリでもやっているようだ。

 ナポリでも、ドミトリーに宿泊した。事前に調べていた情報ではナポリの治安は壊滅的だときいていたのでかなり気を使った。ピアスを耳たぶごと盗まれるという話もある程だった。なるべく治安のよさそうな地域の宿をとっていたが、街を歩いてみると、そこまで悪い雰囲気は感じなく拍子抜けしてしまった。

ナポリの夜に

 ドミトリーで知り合った旅行客達と夜飲みにいくことになった。アイスランド人の青年、カルフォルニアの大学院生、ムンバイからきたインド人と僕の4人である。みんな英語で会話するわけだが、正直言って僕は英語がしゃべれない。

アイスランド人に飲みに誘われたとき

「英語は得意じゃないけどいいかな」と断りをいれると

「僕だって日本語はしゃべれないから、イーブンさ」と言われた。

お互い異なる言語を喋る人たちで、お互いの言語を知らなかったとしても、それはイーブン。それでも一緒にお酒を飲むことぐらいはできるのだ。なんとなくこの言葉は胸にのこっている。

 ただし、他国へ旅するときは、その国の言語を少しでも勉強していく。「おはよう」、「ありがとう」、「美味しい」、「ごめん」、「さようなら」この5個は最低でも現地の言葉で憶えていった方がいいだろう。

 みんなで夜のナポリへ繰り出して、楽しくお酒をのんでいた。そろそろ帰るという段階になって、イタリア人の女の子が声をかけてきた。

「バス代が無くて。2ユーロくれない?」

インド人は、物乞いの対応になれているようで端から相手にしない。アメリカ人と僕も一切金をだそうとは思っていなかった。しかし、平和な国アイスランド人の青年はしょうがないという顔で、2ユーロをあげた。すると、味を占めたイタリアガールが更に声をかけてくる。

「いいもの買ってくれない?」そうして路地へ入っていく。今度はインド人が乗り気になって、路地裏に入っていった。僕はとんでもない事に巻き込まれてしまうのではないかと不安になりつつ、好奇心に素直に従い路地裏についていく。

女の子は、タンクトップの胸元をずらし、おっぱいの谷間からビニールを取り出した。中には大麻がはいっているようだ。

「20ユーロでどう?」

するとインド人が「おいおい。インドじゃもっと安いぜ、なしなし。」と値下げ交渉をはじめた。アメリカ人は、財布の中を確認しだし、アイスランド人と日本人は目を合わせて、うしろへ下がり始める。

僕は映画の中に入りこんだような感覚になりひどく興奮してしまっていた。可愛い女の子がおっぱいに大麻を隠すなんて実際にあることなのかと。 結局、インド人の交渉は破談してしまったようだった。

ナポリの治安は悪いという事を実感すると供にどこか満足感に包まれていた。

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