ジョードプルから帰りの列車に乗り込んでニューデリーへと向かう。
もっと旅したいような、早くおさらばしたいような気持ちだったけど、日本が近づくにつれどこか、安心感を感じていた。ただ、不安要素が一つ、そう、列車の遅延だ。インド列車旅で嫌と言うほど、外国の交通機関の不安定さを学ぶことになった。いつもありがとうJR。
インドの列車は基本遅れる。早くて30分、遅くて5時間。
神に祈りながら列車に乗ったのは、最初で最後ではなかろうか。基本的に、移動日と帰国日の間に一日挟まなければならないという、旅の基本を初回で体感できたのは良かったのかもしれない。
駅につくたび、駅名と到着予定時間を見比べるハラハラは、今思えば楽しかったのかもしれないが、二度とごめんだ。今回は、幸運なことに、40分遅れでニューデリーに到着した。
急いでタクシーを捕まえた。インドに来て初めてこちらからタクシーに声をかけた気がする。これまた捕まえたタクシーは、後部座席にでかいウーファーを積んで、インドのダンスミュージックをガンガンかけている。
インドのビートに揺られながらエアポートへ向かっている時、ニューデリーを少し好きになった気がした。
空港に着き財布を開くと、大きめのお金しか残っていなかった。基本的に大きいお札は嫌がられるので、あまり出したくないがしょうがない。
「ごめんね。おつりください。」
タクシーの運ちゃんは、嫌がる素振りも見せず、札をぽっけに入れてニヤリと笑う。
「おつりもってないや」
急いでいる僕らの負け。
空港へ駆け込み、この憎めないクソッタレニューデリーからおさらばするのである。
春休みが終わり、大学で久しぶりに、友人と再会した。
「俺さ、インドでクレジットカード不正利用されちゃってさぁ。まいったよ。5万円。」
友人は、あの最後に乗ったタクシーの運ちゃんのようにニヤリと笑った。
「ふーん。こっちは50万。」
僕の場合は、不正利用をされた時には、次の街に移動していたことを、列車チケットで証明できたため、補填されたから損はしなかった。友人は、あまりに多い金額ゆえ、クレカ会社が不審に思い止めてくれたようで、被害はなかったようだ。後半二人ともクレジットカードを使えなくのはこういう訳か…。
そうして、新学期が始まって、普通の生活が続いていく。
ただただなつい話ばかり。記憶は曖昧だけど写真のお陰で結構思い出せる。旅に出る前の鹿児島実習でOGの先生に「卒論書く気で行ってきな」と言われたような。