寒さで目が覚めたというより、寒すぎて小便を我慢して寝てしまったせいで、終に膀胱が限界を迎えて起こされる。そんな目覚めだった。
フロントガラスが白く凍っていて外の様子がわからない。寝袋なしでこの極寒車中泊は無理があったように思う。なんとか外へでて、7時間ぶりのトイレへ急ぐ。
起きてしまえば、寒さもそこまで気にならない。スコットランド最後の朝を味わう為に散歩へでかける。
私が子供のころは、テレビでたまにUMAやUFOの特番をやっていた。テレビタックルはいつしか、政治番組になってしまったけれど、私にとっては大晦日のUMA・UFO番組だ。
子供のころ、恐いものは、グレイ型宇宙人とチュパカブラだったし、恐竜の生き残りやスカイフィッシュやツチノコに心弾ませたものだった。
ハタチを超えそこそこ経って、実際に御伽噺の出来事が自分には発生しないとそろそろ気づいてきた。当たり前の現実に少し抵抗しながらも、概ね諦めがちになっていた。
それでもなんとなく、この湖には思い入れがあった。そして、私の旅の目的になりえる魅力があった。
静寂の中で、湖面が鏡面のように滑らかに広がっていた。霧が視界を覆っていて向こうを見通せないでいた。
動きのない世界から眼を背け、次の目的地へ意識を向けたとき、どこかで、大きい水生生物が湖面へもぐる音を聴いた気がした。