船を使った入国時には、船の中で入国審査が行われる。列に並んでる最中にメキシコ出身で今はアメリカで働いているという男に話しかけられた。内容は覚えていないが、オリンピックのこととかが話題になった。
スペインからモロッコのタンジェについた。タンジェについたらまずやることは時計を一時間戻すことだ。船に乗った時間と降りた時間が一緒だと少しお得な気分になる。
下船時に同じ船に乗り合わせた日本人の男女に声をかけてみた。二人は、三週間の休みを使って旅をしているという。この後はサハラ砂漠へ行くといっていた。羨ましい、女の子と僕も旅行に行きたい…。
モロッコを歩いていると、先ほど船であったメキシコ人の男に声をかけられた。その男は同じ小学校だったという友人と一緒に旅をしていた。
「これからの予定はどうなってんの?」
「23時発の夜行バスまではぶらぶらする予定。ノープランだ。」そう答えると、じゃあ飯でも一緒に食おうぜと誘ってきた。普段なら断っていたかもしれないが、初めてのアフリカ大陸で現地通貨もゼロという状況におかれていて、心細さを感じていたし、偶にはいいかと一緒に行動することにした。
話しかけてきた男はマリオ。その友人はウィリアムという名だった。
マリオとウィリアムの宿へまずは荷物を置きに行った。店主の男に換金所の場所を尋ねたが、この時間じゃやってないよといわれてしまう。だがここらへんの店ならまだユーロは使えるよという情報を得ることができた。
3人で、レストランへ入店した。僕はタジン鍋を、二人はケバブを注文した。
「ぞお、君はどうやってここまで来たんだい?」旅人の話題は”どこから来てどこへ行くのか”、”今、何日目なのか”、”何日間の旅なのか”という話題から始まることが多い。
「スペインから来た。バルセロナからコルドバへそしてセビリアまで移動してそっからバスで…」旅程順に説明していく。
「どうやら、セビリアから同じバスで来たようだね。バルセロナはどうだった?これからまたスペインに戻って行く予定なんだけど」
「僕は、スペインだったらセビリアが一番好きかな。サグラダファミリアは凄かったけど。」正直に答える。ただ、解釈の仕方は旅人の数だけある。実際に行ってみて本人が評価することだ。
「スペイン語は喋れるの?モロッコはフランス語だけどフランス語は?」
「スペイン語もフランス語も英語も満足に喋れないさ」僕はたどたどしい英語で会話する。日本語に意訳していると会話がスラスラできているように錯覚するが、そんな事は、まったくない。マリオは比較的フィーリング英語で伝わるが、ウィリアムはまったく理解できないようだった。僕の適当英語を解読してウィリアムに伝えるのはマリオの仕事だ。
「英語も喋れないのにこんなに旅行をしてるなんて…どうやって?」
「コミュニケーションで必要なのはハートとちょっとの単語とジェスチャーじゃん。だってさ、俺が言いたい事なんとなく理解できて会話できてるでしょ。」
マリオとウィリアムは少しびっくりしながら、確かになんとなくで会話できてると納得していた。僕らは、お互いの国を旅するときにまた会う約束を交わして、インスタをフォローしあった。インスタの使い方いまいちわからないけど。
僕はマリオに頼んで、彼がATMで恐る恐る引き出したモロッコディルハムとユーロを交換してもらった。これでしばらくは、水分補給くらいはできるだろう。
モロッコで歩行者用信号を見た覚えがまったく無い。
道路を渡るのは非常に怖かったが、ここを渡らねばバスに乗れない。熟練モロッコ人の様子を伺いながら一緒に横断した。
バスターミナルにて。
夜行バスの隣には、子連れのご夫人が。まだ小さい子供はぐずりながら、時には僕の膝をつかいながら、一生懸命母親の膝で眠っていた。
気づけばフェスに到着していた。ここには世界最大級の迷宮都市があるという話をきいてやってきた。
モロッコのゴミ処理。路肩で火をつける。
モロッコの湯沸し。壁際にゴミを集めて燃やしてヤカンを置く。
薬局のマークが三日月型になる。イスラム国家にきたことを実感する。
バスターミナルから旧市街地の迷宮まではおよそ一時間程度歩く必要がある。