友人が韓国に住んでいる。
国境が閉ざされて数年。
そろそろ、入国しやすくなったぞと連絡を受け、友人がまた他の居場所へ旅立つ前に会いに行くことにした。
韓国は2度目だ。
この国は、思っているよりアジアで、素直で、因縁深い。
個人的に韓国は往生際を無視して、食らいつくハングリー精神がある国だと感じている。私は、負けを認めるという潔さを美徳に感じているので、苦手でもあるが、羨ましくも感じる国だ。
私が見る韓国は、KPOPではなく演歌みたいな曲がかかっている。
さて、 今回の旅には一つ大きな目的があった。
それは、食である。
名前不明の超おいしい鍋 ナッコプフェ?みたいな名前だった気がする。料理の写真は忘れた。
今回は、鍋に、焼き肉に、チーズタッカルビに色々と楽しむことができた。辛かったけど。
だが、私はただただおいしいものを食べに来たわけではなかった。
今回のメインは、「ホンオフェ」と呼ばれるガンギエイを腐らせた韓国の伝統料理である。
この料理は、世界で最も臭い食べ物ランキングの第2位の常連である。作り方は色々あるらしいが、壺に切り身と牛のうんこを一緒に入れて発酵させるなどの作り方もあるらしい。とにかくゲテモノちっくなエイの切り身だ。
私と友人は、これを本場で食すという目的のために、ソウルから3時間程度南にくだった光州へとむかった。
この街は、韓国が軍事政権の時に、民主化運動をおこない、住民が軍によって殺されたことで有名である。
光州がある全羅道は、ガンギエイという蔑称があり、韓国国内で差別を受ける地域でもあり、政治的にスルーされやすく開発から取り残されているという背景があるらしい。
この街のタクシーの運転手は、「光州は昔、第3の都市だったのに今や見る影もない。我々は無視されている。」とこぼしていた。
中心部にはビルが並びそれなりに栄えている様子があったが、何となく気だるげな雰囲気が流れている。
さて、光州の中心街で、民主化運動博物館などを見学しているうちに、お昼の時間になった。この旅のメインディッシュであるホンオフェを食べに行きますか。
光州には、二つのメイン地区があり、新しく開発されている地域の近くにある食堂に来た。ここは、老舗であり、比較的食べやすいホンオフェを出すことで有名だ。
ホンオフェの食べ方はいくつかあるらしいが、私たちが食べたのは、豚肉とホンオフェを海苔に巻いて辛味をのせて食べるという料理だった。まず、初めて口に入れた感想は、アンモニア!!!!といった感じだった。味は苦く、切り身単体での臭さというよりかは口に入れ噛んでいる時に、アンモニアが徐々に染み出してきて唾液を汚染していく感じである。豚肉などがボリュームがあるせいで、味は誤魔化せても、嚙み切れないのでよく噛む必要がでてきてしまい、余計に厳しいという結論になった。
韓国人の店主は、「日本人には食べれないんじゃない?」と奥さんと話していたが、それが我々の心に火をつけた。我々が、ホンオフェを食べれなかったせいで、日本人は根性なしと思わせるわけにはいかない。大和魂を見せてやれと。
それ以降は、ホンオフェをごま油と塩に付けて口に押し込み、マッコリを流し込むという戦法に転換し、なんとか完食してみせた。
我々は、日本人のプライドを守り切り、堂々と店を後にし、遺跡を見に行った。
光州には、日本の古墳があり、日本から朝鮮半島へ渡った人々がいたと考えられている。ただし、小中華思想である韓国では、常に文物は朝鮮半島から日本へ渡っていなければならないため、都合の悪い遺跡はそのまま埋めてしまうこともあるらしい。我々が見学した遺跡はなんとか難を逃れた前方後円墳であり、周囲は公園のようになっていた。
はるか昔にここに眠る同族を尻目に、友人はホンオフェをトイレで吐いていたわけではあるが。
すっきりしつつも、再度喉をアンモニアに侵された友人と共に、次は木浦という港町へ向かった。
この町は、日本統治時代の建築物が残っているらしく、そういうイメージで観光に力を入れている町である。
看板も立て、日本統治時代の味わいがあるレトロな観光地化を目指しているが、博物館には、日本統治時代におこなわれた残虐な統治を展示している。日本統治時代に木浦では人口が増えたという展示の横で、日本統治時代は酷いと言われてもすんなりと理解できない自分もいた。
軍艦島にあったことにされている「母に会いたい」という実際には映画撮影スタッフがおこなった演出の落書きなどが、なぜか展示されていた。
また、たまたま、食のフェスタが開催されていたが、司会が最後に退場する直前に、「アンパンは日本が中国や朝鮮を侵略する為に作ったパンです!!」と発言して退場していった時は、何だか面白さすら感じた。最後の発言がそれでよかったのかと。
韓国に今行くとわかるが、日本のチェーン店が多く色々な所で目にすることができるし、繁盛している。なんなら、木浦は日本統治時代の懐かしい町並みというブランディングで観光地になっているのだ。
韓国が日本とどういう関係を築いていきたいのかわからない。ただ、お互いが妥協できたらいいとは思った。
韓国は、東アジアにおける自由民主主義の砦である。
困難な地域で同じ政治基盤を共有する陣営ではあるが、韓国の未来は韓国人が選ぶ。
私はただ韓国の人々の選択を、知っておこうと思った。
次来るときは、幻の酒「トンスル」という人糞酒を目的にするつもりだ。実はすでに、売ってあるのではないかという薬局も友人が突き止めているらしい。流石に飲みたくはないが、ネットではデマと言われ、当の韓国人すら都市伝説だと思っている漢方には興味をそそられる。
街中をあるけば、犬料理やカタツムリ汁などの料理が実際に売られている韓国は、面白い。今後はこういった古くエグイ伝統はどんどん消されていくかもしれない。その前に、私はできれば実体験として味わっておきたいのだ。