モーテルを飛び出る。一刻も早くこの大都会を抜け出そう。

何が僕にそうさせるのかはわからない。人が大勢いる場所の方が、孤独がより強いからだろうか。それとも単純に街に興味が無いのか。理由はわからない。

だが、デスバレーについて一つ気づいたことがある。僕はアメリカの道が好きなのだ。

地平線の向こうまで続く道路。変わらないようで少しずつ変化していく風景。この道をまだ走っていたい。カーステレオで音楽を流しながら、風を感じながら、空を飛んでいくように。

見つめている 胸の奥のさみしさ どこかにいる 私に似た誰かに 出会える気がする I’m flying alone

山下達郎 Human

 アメリカでおよそ一週間、4000キロくらい走った気がする。観光している時間より車に乗っている時間のほうが多い。だが、後悔は一切ない。むしろ走り足りないと感じているのだ。

道沿いに広がる光景がダイナミックで、美しい。道沿いにある小さな町の骨董屋に入ったり、食堂で飯を食うのが面白いのだ。

ルート66沿いの小さな町で入った骨董屋には僕が持っているアメリカ製のタイプライターと同じものが売っていた。僕の部屋でホコリを被っているアイツは本当にこの大陸から来たんだなと嬉しくなった。

赤い砂漠。僕は一人ここにいる。

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