私は怒っている。
もてはやされる寅さんの名言について。まずは下の動画を見ていただきたい。
この名言は、こんな軽く消費されて良いものなのだろうか。
私は、この名言が生まれた「男はつらいよ 寅次郎物語」こそ、現時点で世界で最も好きな作品と言える。
以下ネタバレあります。是非、視聴してから読んでください。
生まれてきて良かったなと思うことがなんべんかあるじゃない。そのために人間は生きている。
この名言はもともと本作のヒロインである隆子が発言した内容である。
隆子は、過去に子供をおろしていて、それが本人を苦しめていた。
だが、本作で子供の命を救う出会いがあり、そこで発した言葉が、上の寅さんの名言の元ネタなのだ。
私は、常々人の罪は許されるのかについて考えていた。過去に起こした過ちを時々思い出して、自分の馬鹿さに苦しくなることが時折ある。そのたびに、自分が幸せに生きることを望むのはおこがましいのかもしれないとまで思う時もあった。
人はみな、生きていれば罪を背負う。望んでいようと望んでなかろうと、他人を傷つけ、己を傷つけそしてその傷のために苦しんでいる。時間は戻らない。そのために一生償えない罪を背負ってしまう。
でも、私が今、生きていて良かった。今この瞬間のために私は生きていたのかもしれない。
そう心の底から思ったとき、人はそこに救いを感じるものなのだ。
私も時折、救われるし、今後も救いを感じる瞬間はあるだろう。だから、生きていられるのだ。
この「男はつらいよ 寅次郎物語」は、かなりストレートかつシンプルに、人間の生きていける意味を描いた名作である。
あなたが、背負っている傷や罪は、消えることはない。だがそんなあなたが、居たから救われる人がいる。そしてあなたは、その人を救うことで、自分を少し許せるのだ。