パリから飛行機に乗りミラノへついた。このミラノの為にジャケットやスラックス、革靴までリュックの中に詰め込んでいた。

 そう、スカラ座で、モーツァルトの「魔笛」を観賞しようと考えていたのだ。もちろん座席は日本で予約済みである。面白い事に郵送でイタリアから格式高そうなチケットが送られてくる。まずそれだけでテンションがあがる。確かに電子発行は楽ちんだが、郵送というのはかなり乙だ。

 社交界デビュー、あわよくばお嬢様をナンパしてローマで休日をすごそうかなんて思っていたのだ。

 まずは、身だしなみを整えなければならない。10日間以上も旅を続けていたので身も心も研ぎ澄まされていた。悪く言えば、人間メッキがはがれて獣よりになっていたとでもいうのだろうか。初めての一人海外だったし、テロなんかも起こっていた時期だったので、常に緊張しながら旅をしていた。

 旅とは安全に終えなければ意味がなくなってしまう。ちょっとしたトラブルは笑い話になるが、パスポートをすられたなんて事になったら目も当てられない。

 そんなこんなでまずは身だしなみだ。髭を沿ってシャワーを浴びて飯を食おう。

まず、宿へ向かうまでの散策中に見つけたピッツァリアに入った。四種のチーズピザとコーラを注文する。

 おったまげた。美味しすぎた。一気にイタリアが好きになった。飯がうまいのは一番幸せな事だ。Buono!Buono!とピザ一枚を平らげる。

 髭を剃りたいと個人商店にはいると、おじさんと子供が店番をしていた。カミソリの英語もイタリア語も知らないので、子供に向かって髭を剃るジェスチャーをする。そうすると売場まで案内してくれて、袋から一個だけわけてくれた。旅人には5本は多すぎるのでとても助かった。

 宿はドミトリーの安宿だ。金銭的にはしょうがないことだ。

 シャワーを浴びようとシャワールームをあけると黄色い水たまりが。アホな奴が、宿の共用シャワーで用を足したのだろう。さっと水で流し、違うシャワー室でシャワーを浴びる。

 勘弁してくれアホどもよ。イタリアの名誉のために言っておくがイタリア人がやったことではない。安宿の民度なんてたかがしれている。あまり気にしてもしょうがない。

 黒いYシャツに袖を通しネクタイをしめグレーのジャケットを羽織る。革靴をはけばダンディーな好青年のできあがり、チェックイン時のボロボロさを知っている受付してくれたお姉さんが目を丸くしていた。Ciaoとスマートに通り過ぎる。自分で言うのもなんですが、少し格好良かったんじゃない?

 いやあ流石スカラ座、優雅な内観で想像通りの歌劇場という感じ。座席は少し良い席にしてみた。着物のおばさま方や、ドレス姿のマダムなどがわんさか、パパラッチも来ていたのでセレブや王族もいたのかもしれない。

 肝心のオペラは楽しめましたとも、途中で少し寝てしまったけど。コンサートホールで寝るのが大好きな私としては眠気に逆らえる訳がないのです。

一番ショックだったのは、一番安い席ではありますが、ポロシャツのおっさんが居たこと。わざわざ革靴まで担いできたのに襟つきだったら大丈夫だったのかな…。重かったのに…。まぁお洒落な格好してオペラをみたほうが気持ちがいいけど。

 宿を出るとき掃除夫の青年に革靴をあげた。高校の頃に使ってたものだが、本革だしもったいないから。捨てられたかもしれないけど。

最後の晩餐がある教会
地中海を照らす太陽がまぶしい
美味しそう

地中海の太陽に照らされて

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