宿をめぐる冒険

 インドで一番やかましい都市ニューデリー。好きとはいえないけど、どこか憎めない。

 ニューデリーに到着すると埃をはらんだ大気の向こう側に真っ赤な太陽が登ってきた。空気を吸い込むと、ここが日本ではないという実感がわいてくる。

 ひっきりなしに声をかけてくる安いタクシー”トゥクトゥク”に、丁度いいやと乗り込むと有無を言わせず、僕らを胡散臭い観光案内所へ連れていく。変な高額ツアーを組まれる前に地図だけしっかりもらい案内所から退散しなければならない。

 まずは宿へ行くべきだろう。重い荷物と一緒じゃあ楽しめないのだ。

 意気揚々と地図を見ながら予約していたホテルを住所頼りに探すと、あるべき場所には廃墟があったりするのである。

 近くにいる”トゥクトゥク”に声をかけ、予約シートに書いてあるホテル名を見せた。

「字が読めないから、声で教えてくれ」

 ホテル名を伝えると”トゥクトゥク”はホテルが集まる通りに僕らを連れて行った。

「この通りに僕らの予約したホテルがあるの?」

「わかんない。でも、この通りには旅人が泊まるホテルがたくさんあるからどうにかなるよ」

 異国の地のホテル街を呆然とあるいていると、そこにあるはずのない見覚えのある名前が目にはいった。

 僕らはチェックインをすませ、ニューデリーへ繰り出すのだ。

 

 バックパッカーといえば、何を思い浮かべるだろうか。僕の場合は、リュックサックとサンダルを思い浮かべる。馬鹿でした、舐めていた、インドの道を。

 意気揚々とサンダルで街に繰り出したはいいが、道がきたなすぎる。擦り傷でもつくったら破傷風になっちまう、そんなレベルである。野良牛、犬、豚のおしっこやうんちがころがり、ゴミだらけ。雨も振ってないのに水溜りがあれば、それは人のおしっこです。

 早急に靴を買わなければならん。でも安めがよろしい、そんなこんなで露店で靴を探すことにした。長旅になるわけで、徒歩移動も多いから、しっかりとした靴がいい。靴擦れは我慢しよう。

 すると、あの有名スポーツブランド”adibas”の靴が並んでいるのである。こりゃいいやと、黒いスポーツシューズを500円で購入する。その場で履き替え、ニューデリーの道を意気揚々と歩き出した。

 サンダルを手に歩いていると、サンダルとポストカードを交換しようなんて売り子が話しかけてきた。その時は断ったけど、結局どこかのお店に忘れてしまったから、交換しておけば面白かった。

 さて、お気づきでしょうか。僕が買った靴が”アディバス”だったことに。安いから柔らかくて靴擦れはしなかったけども靴底がペラっとめくれる、残念な代物でありました。

 

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