インドの通勤?列車

 ニューデリーからアーグラーと呼ばれる有名な”タージマハル”がある都市へ移動していた。インドで旅するなら列車がダントツで便利だろう。日本と比べ、列車もゆっくりで、インドはかなり大きい。夜に寝台列車に乗り寝てれば朝には目的地につく、ホテル代も節約できる。

アーグラーでは、”タージマハル”などを見て一泊しガンジス川のほとりヴァラナーシーに移動する予定だったのだが、なんと僕らがもっていた乗車券がキャンセル待ちだったのだ。

それに気付いたときは焦った。旅程が全崩れの可能性すらあったからだ。こうなったらきいてまわるしかない。

 近くにいた列車待ちの乗客に訊ねて見たら、あっちの方に行ってみなと指す。あっちの方でまたきくと、あっちへ行ってみなと指す。これをなんどか繰り返したら。怪しげなインド人がついてくりゃ電車に乗せてやると言う。どうやら列車で移動販売をする男のようだった。こりゃ売り子としてキセルさせてくれるのかな?なんて思っていたら、普通に列車に乗らされて終わりだった。

びくびくしながら乗ってると、インド陸軍の憲兵がライフルかついで巡回にくる。

「乗れって言われたから乗ったんです。ワタシインドゴワカリマセーン。」

必死にアピールするも、銃をチラつかせられ、駅で降ろされてしまった。こうしてアーグラー脱出に失敗してしまった僕達は、宿無し状態でアーグラー2日目に突入する事となってしまった。

『地球の歩き方』にでてくる宿を片っ端から訪ね、0時近くになって、ようやく寝床も確保できた。この時がインドで一番へとへとだったかもしれない。

 翌日、二手に分かれて列車予約確保の確率をあげる作戦をたてた。自分は駅で、友人は宿屋の主人に相談しにいき、予約が取れ次第すぐに連絡するというものだ。

さて、僕はあざとい演技ができてしまう。自分でいうのもなんだけれども、ぶりっ子に振舞ったり、まじめそうに振舞ったり使い分けることが得意で世を渡ってきた。

 最初は、翌日の予約なんて取れっこないよと行っていたおっさん駅員を、涙目上目づかいの少年姿で揺さぶりをかける。少し待ってろなんて言われたもんだから、色んなお客さんを観察することで時間をつぶすことにした。20代くらいの現地の青年が、駅員さんとなにやら交渉しているのを見物していた。すると、

「アチャー」

と残念そうに呟き、肩を落として帰っていったのである。

 えっ日本語を喋った?。そう思ってしまうぐらい自然にアチャーと言うのである。あとあと話しをきいてみると、アチャーとは日本の”あちゃー”と同じ感じで使うらしい。それを知ったあと、僕が”アチャー”は色んな場面で多用したことは説明するまでもないだろう。

 おっさん駅員のランチタイムを待ったりしながら、粘ること3時間、なんとか予約を確保できたのである。いやー良かった良かったと意気揚々と宿へ帰ると、友人が嬉しそうな顔で走ってきて。

3等寝台列車 夜には背もたれを立てて3段ベットに変身する。

「チケット!取れたぞ!」

友人が予約したチケットの方が高価で良い席だったのでそっちに乗る事にした。クーラーついてる列車の快適なことにびっくり。でも、3等列車の方が好きだったりする。

自分の予約キャンセルで、キャンセル待ちの旅人を救えたら幸いだ。そうして、東へ。

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